神経痛にすぐれた効き目があるという湯から上がり、温まった体を夜風にでも、と思い窓をいっぱいに開けてみた。松本平の明りが下の方でキラキラ輝いている。どこかの町で見た百万ドルの夜景にもおとらない。高校の先生をしていたという主人の山村さんに、先程聞いた話を思い出した。
「ここは空気が良いから、宿からの展望が何よりのお土産です。夕焼け空の下に紫のシルエットを見せるアルプスの山なみ。松本平の夜景。それに雪をかぶったアルプスの頂きに、朝日があたる時などは、自然の美しさに感動します」。
と、教鞭をとる情熱の教師像そのままの語りだった。
太いはりや欅の柱に風格を見せる食事処は新潟の豪農の館を移築したという。見事なたたずまいである。
宿から車で30分ほど上ると高ボッチの高原である。広々とした草原はレンゲツツジ、ニッコウキスゲ、マツムシソウ、と花の絶え間がない。アルプスの山容も美しい。