雨飾温泉はまさしく秘湯である。バス利用なら山口から2時間ほどの歩きを覚悟せねばならない。ただし乗用車なら糸魚川から約45分の雨飾山の麓である。「やっと車道らしきものがうち迄つきました」と支配人が言ったのが平成11年の夏である。
鋸の歯のような駒ヶ岳（1498㍍）の岩峰を左に眺めながら、ぐんぐん山道を上ると終点が海抜960㍍の雨飾温泉である。
雨飾山荘は、もともと雨飾山の登山者の為の山小屋として発足したものらしいが、近年は秘湯好みの人々もじょじょに増えているという。一軒宿は山小屋に毛の生えた程度の設だが、3人の従業員が山菜とりから掃除と必死になって頑張っている姿が目についた。
湯は内湯もあるが庭先に「都忘れの湯」という露天風呂もある。自家発電のほの暗い電灯のともる頃には、さえ切るものもない星空が宝石を散りばめたようにうつくしい。