米坂線の沿線はあまり人の知らない旅の穴場である。それだけに、観光地にはないういういしさを感じるのが荒川峡である。鷹の巣温泉もその一つであろう。長いつり橋のむこうに9棟の離れ家を点在させているのが鷹の巣館である。そのうち8棟は露天風呂付きである。
「雪が深いものですから、庭を守るのも容易ではないんです」主人が言うように、3000坪の敷地は自然を生かした庭である。
一戸建てというのはどこか解放感があるものだ。さっそく風呂に入ってみたが、無色透明の弱塩泉の溢れる浴室は、しみじみと温泉のよさを味わせてくれるようだ。窓をいっぱいに開けると、河鹿のかん高い声と蝉しぐれがとび込んできた。
食膳は旬の素材を生かした郷土料理で、一品ずつ離れまで運んでくれる思いやりがうれしい。